いつか生まれる衣装にいつも意識がいっている
―― ベイツさんは、チョックさんの才能についてどう思われますか。
ベイツ マディの才能をスケートでだけではなく、衣装のデザインを通してみなさんに見ていただけるというのは、とてもかけがえのないことだと思っています。アイディアがマディの頭の中に浮かび、それが実物になって、ぼくもそれを着る。スケーターであるだけでなく、彼女は素晴らしいアーティストなんだということを示すのに、これ以上すばらしい方法はないと思えるくらいです。
―― これからやってみたいと思い描いていることもあるのでしょうか。
チョック ええ、何千個も。私は常に衣装デザインのアイディアを追い求めているから、これからもたくさんの衣装を生み出していきたいです。
ベイツ まだ実現していないデザインがすべて納められたノートもあるし、将来誰かが着るかもしれないデザインが載ったカタログもある。彼女はいつも他のスケーターのための衣装をデザインし続けているんですよ。
―― では、この大会(2024年のNHK杯)で着用された衣装のなかで素敵だと思ったものは?
チョック たくさんあるけれど、ユナ(青木祐奈)が昨日のフリーで着ていたドレスは本当に私の好みでした。デザインそのものがとても美しかったし、天女のようで彼女にすごく似合っていました。
オリンピックで、素晴らしい瞬間を生み出していると思う
―― お2人は夫婦スケーターですが、結婚したことで変わったと感じるところは?
ベイツ 正直な話、日々いっしょに生活しているなかで、結婚したことによってそんなに大きな変化があったとは感じていないんです。(笑)これまでもいっしょに競技に取り組んできたし、いっしょに生きてきたし、リンクの外でも絆を深めてきたと思います。残りの人生を夫と妻として生きるというのは、すごく幸せで意義深いことですし、ぼくたちの関係性やお互いへの愛情はより深まっていくと思っています。
―― フィギュアスケートは長く、「女性は女性らしく、男性は男性らしく」という風潮でしたが、衣装におけるこの問題をどう捉えていますか。
ベイツ いついかなるときも表現に自由があるべきだと思います。表現の自由に関する変化はこれまでいくつも見てきましたし、過去2年はパンツスーツにするかドレスにするか、着たいものを着ることに対して制限を設けないというスタンスでした。ぼくも自由に着たいものを着られる状態がとても心地いいし、もっといろんなことが許されるべきだと思う。新しい可能性に対して常に門戸が開かれるべきだと考えています。
―― ベイツさんはISUのアスリート委員でもありますが、フィギュアスケート界に対してどのような責任があると感じていますか。
ベイツ すごく重要な役割なので、アスリート代表として委員に選ばれたということに大きな責任感を抱いています。アスリートの声を聞いていくことはフィギュアスケートをよりよいスポーツにすることにつながっていくと思いますし、そうしていくうちに全体の意見をよく汲み取ったスポーツになると思います。結局、フィギュアスケート界でいちばん重要な位置を占めているのは、スケーターだと思うんです。スケーターなしにフィギュアスケートは成り立たないわけですから。どんなときも我々スケーターは、フィギュアスケートがどんな方向に進むべきか話し合わなければいけないと思いますし、そのことについてISUと議論する場も設けなければいけないとも思うんです。ぼくはいつも、自分たち委員が決定することがどんな結果になり、どうスケーターに影響を与えるのかを考慮することがいかに大切かを心に留めています。2年この立場に就いていますが、本当に自分にとって価値ある学びの機会を与えてもらっていると思います。アスリート代表としてISUのこともたくさん学べましたし、この立場に就かせていもらっていることがすごく励みにもなっています。明らかにこのスポーツは、まだまだよくなっていく余地があるし、ぼくたちも進化し続けたい。それが見据えていることですね。
―― そんななか、あと1年半でオリンピックがやってきますが、どんな準備をしていきたいですか。
チョック 自分たちはいま正しい方向に進んでいると思っています。ここまで、毎シーズン、毎試合、私たち自身のこと、自分たちの試合までのプロセス、やるべきことはなんなのか、ということについて多くのことを学んできました。いままでやってきたことすべてが前進につながっていると思いますし、次のシーズンでそれが結晶となって表れると思います。いままでの努力の成果を発揮して、私たちがどれだけスケートを愛しているか、スケートが私たちにどれほど多くのものをこれまでもたらしてくれたかを滑りで示したい。来シーズンはすばらしい1年になると思いますよ。
ベイツ 時が過ぎるのは速いですね。ぼくもマディもとても長い間スケートをやってきたし、組み始めてからも13年が経ちましたが、急速に駆け抜けてきた感覚です。1年半後の目標は、ぼくたちがやってきたことが評価されること。毎日ベストを尽くして、あまり未来を見過ぎないようにしているので、オリンピックは気づかないうちにやってくると思います。その瞬間をきちんと味わいたいですね。ぼくたちはもうすでにたくさんの試合を戦い抜いてきたアスリートですから、オリンピックでも自分たちの愛するスケートをするだけです。オリンピックできっと素晴らしい瞬間を自分たちが生み出していると思うし、残りの人生もともに歩んでゆくと思います。
―― ありがとうございました。