12月に入り、いよいよ半月後に迫った全日本選手権。11月23、24日に東京辰巳アイスアリーナで行われた全日本ジュニア選手権の結果を受けて、すべての出場者が出そろいました。
来年2月のミラノ・コルティナ・オリンピックへの最終選考会を兼ねる今季の全日本選手権は、シニア選手たちの熾烈な代表争いが予想されます。同時に、次代のスター候補たちがまばゆい輝きを放つこともまた、オリンピックシーズンの全日本選手権ではしばしば見られる光景となっています。今シーズンは、シード選手や全日本ジュニア選手権からの推薦など、昨季を上回る男女10名のジュニア選手が全日本選手権に出場します。その筆頭で、前回大会銀メダリストとして全日本選手権に臨む中田璃士選手の全日本ジュニア選手権での戦いを振り返ります。
怪我のなかで達成した全日本ジュニア選手権連覇
日本のジュニアのレベルは年々上がっている。11月の全日本ジュニア選手権では、女子のトップ4選手がトリプルアクセルに挑み、男子のトップ4選手は4回転を着氷した。世界を見渡しても、ジュニアグランプリ全7戦で、国別で最多となる男女7個ずつのメダルを獲得している。
そんな日本のジュニアをリードする1人が、世界ジュニアチャンピオンの中田璃士だ。昨シーズンの全日本選手権では2位に入り、今季はシード選手として全日本選手権に参加する。だが、今シーズンの中田は逆境にあった。
12月にジュニアグランプリファイナル、全日本選手権を控えるなか、11月23日、連覇がかかる全日本ジュニア選手権に臨んだ中田。そこで、左足中足骨の疲労骨折を負っていることを明かした。
(7月の)ジュニア合宿あたりから左足に痛みがあって、グランプリ(9月のジュニアグランプリタイ大会)が終わってから診断を受けました。レントゲンをジュニアグランプリ2週間前に撮って何もないと言われてホッとしていたんですが、(タイ大会から)帰国してパパ(中田誠人コーチ)にMRIを撮りにいくよと言われて行ったら、結果、折れていました。
1週間ほど氷に乗れない時期を過ごし、陸上トレーニングに励みつつ、スケーティングから徐々に氷上練習を再開。全日本ジュニア選手権への出場を決めたのは3週間前だったという。
全日本ジュニアに出るのが目標で治療をやっていたので、MRIの結果がよかったら出る、よくなかったらジュニアグランプリファイナルに合わせるという感じで、3週間前のMRIで決めました。まだ治ってはいないので、またやりすぎたら悪くなるとは思うんですけど、全日本が終わったら休めたらなと思います。
それでも、シーズン中盤の勝負どころとなる全日本ジュニア選手権では、昨シーズンから継続するSPのフラメンコでキレのあるジャンプを揃えて、84.99点でトップに立った。フリーに向けて、「ぶっちぎりで優勝を目指して、4回転もスケーティングもスピンも全部がずば抜けているところを証明したい」と、潔く宣言。
翌日のフリーは、まさに有言実行の演技だった。伸び盛りの選手たちが次々好演するなか、最終滑走で登場した中田は、「グラディエーター」の力強い音楽とともに、4サルコウ、4トウ、4トウ+3トウを決め、2本の3アクセルも成功。最後の3ループがやや回転不足になった以外はすべてのジャンプを成功させ、怪我に伴うスタミナ不足のなかでも懸命に演技を完遂した。
演技を終えて氷上にしゃがむと、小さく拳を握って自身の健闘を称えた。
喜びもありましたし、自分の前に(SP2位の西野)太翔や(SP3位の蛯原)大弥がノーミスしていたので、まじで過去一緊張しました。それから解き放たれた感じです。
合計255.25点は、2019年大会の鍵山優真の記録を塗り替える歴代最高得点となった。初めて経験する大きな怪我。周囲の選手たちがジャンプを練習するなか、「我慢するのは大変だった」。あの日の我慢が今日の1番につながった。
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