2025年10月にワルシャワで開催され、日本でも大きな話題となった第19回フリデリク・ショパン国際ピアノ・コンクール。入賞者による凱旋ツアーとなる「第19回ショパン国際ピアノ・コンクール2025 入賞者ガラ・コンサート」(1月27、28日/東京芸術劇場コンサートホールほか)の開催に先立ち、優勝者エリック・ルーさん(アメリカ)や日本人最高位の桑原志織さんらが1月21日、ポーランド大使館で記者会見に出席しました。
フィギュアスケートにおいても、さまざまなプログラムに使用されてきたショパンの音楽。なかでも、羽生結弦さんが、平昌オリンピックで男子シングル連覇を成し遂げたショートプログラム「バラード第1番」は、フィギュアスケートファンにとっては、もっともよく知られている曲の1つです。ピアニストにとって、“バラード”とはどんな音楽なのか? 入賞者に聞いてみました。
桑原志織「羽生さんはショパンを”舞踊”という視覚的な面で、さらに豊かな表現として演じてくださっている」
今回のショパン国際ピアノ・コンクールには、過去最高となる642名がエントリーし、アメリカ、カナダ、中国、日本、マレーシア、ポーランド出身の8名の入賞者が選ばれた。入賞者のなかから日本人最高位の第4位に入賞を果たしたのが桑原志織だ。
桑原は「もちろん私も、羽生(結弦)選手の『バラード第1番』の演技は、テレビの前で拝見しておりました。私たちが演奏という形で表現しているショパンを、”舞踊”という視覚的な面をもって、さらに豊かな表現として演じてくださっているのが、フィギュアスケーターの皆様だと思います」と平昌オリンピックでの羽生さんの名演に触れながら、フィギュアスケートと音楽について語った。「クラシックの作品が使われていることに親近感を覚えますし、ときには、私自身の演奏のインスピレーションをいただくこともたくさんあります。そういった形で、音楽とスポーツという一見相いれないものがつながって形づくられていくのは、大変素敵なことだと思います」

さらに、「ショパンのバラードは、ショパンのさまざまな作品のなかでも、もっとも緻密に書かれており、かつ、表現者側には、もっとも自由な解釈が許されている作品であると考えています。もちろんとても難しいんですけれども、同時に私たちが演奏するにあたって、自分自身の解釈でしたり、自分自身のショパンと向き合う時間でのもっとも大きな楽しみをもたらしてくれる作品の1つではないかと思います」と続けた。
エリック・ルー「バラードほど、複雑でストーリー性のあるショパンのジャンルはない」
また、今回の公演(1月28日)で、「バラード第4番」を演奏する優勝者のエリック・ルー(アメリカ)は、「ショパンの音楽がフィギュアスケートのように、たいへん重要なスポーツで採り上げられていること自体が、ショパンの音楽の普遍性や素晴らしさを証明していると思う」とショパンの音楽へのリスペクトを語った。そして、“バラード”について、「これほど複雑でストーリー性のあるショパンのジャンルはないかと思う。とくに、いちばん最後に書かれた『第4番』は、複雑で、形式にしても、主題にしても、和声進行にしても、もっともすぐれたものではないかと思います。11分の長さですが、弾いていてまったくあきることはありません。それぞれの主題が豊かで、ソナタにしても十分ありえたのではないかと思います。洗練されていて複雑で、ショパンの音楽を代表するものだと思います」と力を込めた。

昨年のショパン・コンクールの様子は世界で配信されたが、視聴者数がもっとも多かったのが日本だという。日本でのショパン人気の高さを物語っている。桑原さんの言うとおり、「ショパンの音楽を“舞踊”として視覚化し、豊かな表現で演じている」という羽生結弦さんの「バラード第1番」の演技を音楽的な面からあらためて味わうのも一興だろう。
