全日本選手権2025は12月19日、東京・国立代々木競技場第一体育館で開幕し、男子ショートプログラムが行われました。鍵山優真選手(オリエンタルバイオ/中京大学)がトリプルアクセルに乱れが出つつも群を抜くフルパッケージのクオリティの高さで、104.27点で首位に立ち、最後から2番目の滑走順で滑った三浦佳生選手(オリエンタルバイオ/明治大学)が4サルコウ+3トウループなど目覚ましい演技を見せて95.65点で2位からの発進。後半グループのトップを切った中田璃士選手(TOKIOインカラミ)が4回転2本を成功させて89.91点で3位につけています。
友野一希選手(第一住建グループ)は4トウ+3トウなどを成功するもスピンの終わりの転倒など惜しいミスがあり88.05点で4位、佐藤駿選手(エームサービス/明治大学)は冒頭の4回転ルッツを3回転にして87.99点で5位。果敢に4トウ、4サルコウに挑んだ山本草太選手(MIXI)が82.21点で6位に続いています。
この記事では上位の鍵山優真選手、三浦佳生選手、中田璃士選手の演技後のコメントを掲載します。
鍵山優真「フリーが自分の壁を超える最大の課題」(SP1位)
―― 演技を終えていかがですか。
鍵山 全日本選手権、そしてオリンピック選考会ということですごく緊張感を持ちながらスタートポーズに立ちました。やることはいつも変わらなくて、どの大会でも目指すべきもの、自分のやるべきものは変わらない。最初から最後までしっかりとパフォーマンスをすることができたと思います。アクセルに関しては回転が止めきれずにバランスを崩してしまったので、まあご愛嬌というか。まだ許せる範囲だったので、そこは明日に向けてしっかり調整していきたいと思います。サルコウは、北京オリンピック(と同じ)くらいのいいサルコウが跳べたので、手ごたえを感じました。これが自分の限界値、いまできる最大限かなと。フリーに向けて弾みのついた演技になったかと思います。
―― 代表選考と連覇をかけたフリーとなります。
鍵山 ここまでが第1章というかベースとなるので、フリーでいいパフォーマンスができるかどうかが自分の壁を超える最大の課題。そこは気持ちを落ち着かせて、そして自分らしさ全開で全力を尽くしたいです。
―― 演技を終えてほっとしましたか。
鍵山 全日本のショートが揃えられないのが数年の課題だったので、アクセルはまあまあ、でも、本当に練習通り、自分の質ですべてのエレメンツをこなせたと思うので、そこはすごく満足しています。アクセルでちょっとマイナスはもらいましたけど、その分ほかでしっかり加点を取れたからこそ104点という点数が取れた。自分の予想を大きく超えてきたので、そこはうれしく思います。
―― 4年前のオリンピック選考会と比べて。
鍵山 4年前は、オリンピックに出ることがそのシーズンの最大の目標で、すごく緊張はしました。羽生(結弦)くんや(宇野)昌磨くんに追いついていけるように頑張りたいという思いはすごくあったんですけど、4年経ったいまは、立場が大きく変わって、追われる立場になったと思うんですけど、でも自分のやるべきことはスケートを始めたころからずっと変わらなくて、高みを目指して頑張りたいと思っていたので、その落ち着きが今日パフォーマンスに出たと思います。
―― ファイナルと同じようなマインドで今日も入れましたか。
鍵山 そうですね。周りがすごく鮮明に見えていたというか、自分に集中しすぎず、でも周りの雰囲気にのまれずというちょうどいいラインでパフォーマンスができてよかったです。今日はショート(「I Wish」)のカバーを作曲してくれたMarcinさんと角野隼斗さんが前の席で(自分の)タオルをもって見ていると聞いていたので、「めっちゃ頑張らないと」という思いでいました。恐れ多い方なので連絡することとかはあまりないんですけど、なかなかそういう機会はないと思うので、最大限のリスペクトをもちつつ、パフォーマンスは自分らしさを出していけるように。今日はしっかり最後まで演じられたのかなと思います。ガッツポーズはあまり意識していなかったんですが、全日本で、目標としていたステップバイステップというのが順調に来ていると思うので、あとは自信だけ積み重ねて、ここからまた頑張って行けたらと思います。
三浦佳生「諦めず追い込んでやってきたことが出せた」(SP2位)
―― 大きなガッツポーズが出ました。
三浦 シーズンを通して辛かった期間だったり、スケートの調子、状態はいいのに、なんでできないんだろうという期間とかはいっぱいあったんですけど、諦めずに過去いちばん追い込んでいましたし、周りの選手も追い込んでいるのは当たり前のことだけど、自分も負けない気持ちをもって、集中しながらやってきたのが、まずショートで出せたのはひとつよかったなと。まずはほっとしてますけど、まだフリーがあるので。ぼくの今シーズンの課題がフリーだと思っているので、この喜びは1時間くらいで忘れて、切り替えて集中したいなと思います。
―― どんな思いで勝負に?
三浦 会場に来て、演技をする直前まで本当に怖くて。例年の全日本よりも背負っているものが大きい感じがして、なかなか自分に集中しづらいなっていう感じが出ていた。そのなかで、いやいや、俺は練習はやってきた、あとは自分を信じるだけだと、開始2秒前くらい、ポーズの膝をつく直前くらいに、できるという自信に変わったので、それがよかったかと。
―― 得点は国内大会ながらシーズンベスト。こみ上げるものがあったように見えました。
三浦 いや、もう本当に怖かったですし、できるのかなというのも途中あったりしたんですけど、自分を信じられた。あとは、拠点リンクでも、周りの選手が自分の練習もあるのにぼくの曲かけを優先させてくれたりと、本当に周りの協力もあったので、それも込みで本当に感謝の気持ちもいっぱいあって、こみ上げてくることもあった。まだフリーがあるので、感謝すべき人に感謝を伝えたいと思います。
―― フリーについては。
三浦 順位は2位ですけど、いったん忘れないとだめだと思うので、本当に自分に集中する、周りを一切見ない。今日もそれができたので、周りの選手の演技や点数を聞かずに自分に入っていくのを、フリーも継続して徹底してやりたい。滑走順も今日と同じ(グループの)5番滑走になるので、SPを練習と思ってフリーをやりたいです。
―― 演技を見ない、点数を聞かないのはスケートカナダからやり始めたと思いますが。
三浦 なんか完全に自分に集中できてる。周りの情報をいっさい自分の頭のなかに入れずにできたかなと思います。まずは自分を信じる。周りが何点出そうが、どんな演技をしようが、自分のやることって変わらないですよね。だから自分のベストを尽くして演技をするために、こういう方法がベストなのかなと。
―― 演技前に怖かったという感覚は?
三浦 会場に行くまでの車とか、会場着いてからとか、急に「始まるんだ」という実感が湧いてきて、だんだん緊張してきたんですけど、「自分に集中しろ、集中しろ」と言い聞かせても、ほかの試合だったらすっと入っていくところが入ってこない。自分はやるべきことをやってきたから、あとはどうでもいいことを考えたり、「太鼓の達人」がリズムゲームなので、ある意味集中になるので、ひたすら打つ、フルコンボできるまでやってきました。
―― キス&クライでもう一度感情があふれるシーンがありました。
三浦 安堵がいちばん強いですね。点数としての目標はあまりなかったので、ショートをいい形で終われたというところで、ほっとして。フリーがまだあるので切り替えないとという感情とかその辺です。
―― 週に1日オフを作るようにしたというのは継続していますか。
三浦 絶対に継続してやってます。1日あると、スケート以外のことを考えられるので、リフレッシュして、ドライブや買い物、あとは感染が怖かったので長時間の外出はしないようにして、SWITCHをそのために買ってひたすら新しいゲームをやっていました。
中田璃士「いままででいちばん緊張した」(SP3位)
―― ガッツポーズが出ました。
中田 今日の朝の練習があまりよくなかったので、いままででいちばん緊張したショートプログラムだったんですけど、1つ1つに集中してやることはやったので、ステップ、スピンは練習が必要なんですけど、ジャンプをまとめて出遅れなかったのでよかったと思います。最初の4回転3つはよかったんですけど、アクセルがあまりいいジャンプじゃなかったので、明日はそれに気を付けて、スピン、ステップも練習します。フリーは構成を変えないで4回転3本で行きたいと思います。やること1つ1つに集中して、またしっかりとGOEのつくジャンプやスピンをまとめて、そのあとに結果がついてくると思うので、また演技終わりに楽しみにしていてください。
―― アクセルの後にもガッツポーズしていましたね。気持ちは熱く?
中田 ステップアウトとかしたらだめなので、そこで耐えて、あまりいいスピード感では行けなかったけど、しっかりまとめて降りれたことにガッツポーズしました。オリンピックシーズンで選手の人たちも去年よりすごくレベルが高くなっているので、それに負けないように、自分もオリンピック選考会がかかっていると思って、明日フリーに挑みたいと思います。
―― 4回転を2本入れる難しさはありましたか。
中田 ジュニアと比べて、いざ4回転になると、やっぱり緊張するので。今回レベルが非常に高いので、1つでもミスをしたら、第1グループや第2グループになる可能性があったので、めっちゃ緊張してました。朝(の練習で)4回転が15本くらいやって1回も決まらなかったので、今日いろいろ考え直して。上がった瞬間に「あ、降りたな」と分かったので、それはよかったんじゃないかなと思います。最初にトウを失敗したあとにサルコウに行けるかといったら行けないので、迷いがありましたけど、フリーでは4回転3本とかやっているので、それに比べたらましだと思ってやりました。
―― 朝の練習からどういうふうに立て直そうと?
中田 朝は睡眠不足だったり、なんかめっちゃ緊張して。昨日、2時間おきくらいに起きて、夢でもスケートの夢を見て、フリーで110点とか出してめっちゃ焦ったんですけど、起きて夢で、次また寝たらまた夢でフリー180点くらい出して、よっしゃと思ったら、起きたら夢で。(笑)睡眠不足といったらあれなんですけど、あまり朝動けなかったので、そういうのもあるかなと思います。ショートは毎回緊張しますけど、これほどの緊張感はあまりなかった。1番滑走も4年ぶりくらいだったので、6分練習が終わって考えるひまがなくて、緊張しました。
―― 演技前に鼻血が?
中田 はい。演技前に鼻血出てきてるって言われて、それをティッシュで拭いて、スピンやっているときにまた垂れてあかんなと思って、(音楽を)止めてもらおうかと思ったんですけど、まあやっちゃおうと思ってやりました。
―― いいほうの夢を現実に変える自信は。
中田 いや、いい夢みたいですけど、その夢を決めるのは自分じゃないので、夢の結果がよくなくてもそれに動揺しないで、明日やることやりたいと思います。



