10月25日、中国・重慶で開催中のカップ・オブ・チャイナで女子フリーが行われ、渡辺倫果選手(三和建装/法政大学)が3位で2年ぶりに同大会でメダルを獲得しました。アンバー・グレン選手(アメリカ)が合計214.78点で大会連覇を達成し、世界女王のアリサ・リュウ選手(アメリカ)は2位で、これがグランプリでの初メダル。渡辺選手、6位の松生理乃選手(中京大学)、10位の吉田陽菜選手(木下アカデミー)の演技後のコメントをお届けします。
女子3位 渡辺倫果「ひとまず表彰台」
―― 残り1人で暫定2位です。表彰台決定おめでとうございます。
渡辺 もうショートに救われた部分と、やはり細かい部分の積み重ねがあって、こうしてギリギリのところでとどまってくれたんじゃないかなと思います。まずはひとまず表彰台に乗ることができて、良かったんじゃないかなと思います。
―― 順位が出たときのほっとした表情は、表彰台が分かって?
渡辺 そうですね、表彰台。フリーの点数的には4位だったので、ちょっとやばいかなと思って。(暫定順位が)3位だったら、(最終)4位になってしまうのが、(次が)世界チャンピオンだと分かっていたので、2位と出た時点で安堵の気持ちになりました。
―― 1本目のコンビネーションでの転倒は、トリプルアクセルを降りた安心感が?
渡辺 そうですね、アクセル+トウループのトウでこけることが、いまのところブロックぐらいで、練習でもほとんどやったことのない失敗でしたので、ちょっとびっくりして、少しだけフリップに動揺が出てしまったとは思うんですけれども、ただしっかり2つ目のアクセルも、綺麗ではないんですけど、一応立てたという面でまずます良かったかなと思います。
―― 公式練習では少し苦戦しているようにも見えましたが。
渡辺 ちょっと難しい部分ではあるんですけれども、公式練習から絶好調で行ってしまうと、やっぱり動いているので、本番のときに疲れてしまうといったところで、べつに公式練習での失敗とか、あまり絶好調じゃなくても不安にならないような練習をいままで積んできていますので、そういったところでは不安要素は少なめだったとは思います。ただショートからトップのほうにいてこう(フリーにミスが出る)なるのはなかなか、フリー番長と言われるぐらい、けっこうフリーで巻き返すことのほうが得意と言いますか、気持ち的にも追い詰められるほうがやるタイプですので、逆にこのグランプリシーズンの1戦目の段階で、そういった経験ができたのはすごく大きかったんじゃないかなと思います。
―― 試合の前の緊張感について。
渡辺 ショートはショートで本当に死にそうなぐらい緊張していたんですけれど、フリーはまた違った緊張感のなかで、自分との戦いで自分に勝ちたいと思う反面、やっぱり順位が見えてしまうといったところで、ショートだったら順位がまだ確定しないので、自分にしっかり集中することはできるんです。やっぱりフリーはショートが良かった分、多少の(メダルが獲れるという)ちらつきはあったので、勝ち切れなかった分は自分でもちょっと悔しい部分ではありますけれども、ただいまはひとまず表彰台に乗れて、まずまず良かったかなと思います。
―― 今大会でトリプルアクセル3本に果敢に挑めたことについて。
渡辺 果敢に挑んでも問題ない練習を積んできていますし、あと2週間、アメリカ大会までありますけれども、ショート、フリーしっかりノーミスで揃えられるように、次なる目標はそこかなと思います。
―― 自分に打ち勝てました?
渡辺 そうですね、ショートはとくに打ち勝てたと思いますし、フリーはやっぱりショートが良かったぶん、自分との戦いと思っていながらも、順位がちらつくといったところで、トップ選手はこうやって戦っているんだなという気持ちにもなりました。それが第1戦目で経験できたのは、次に繋がると思いますので、この1、2週間、自分のスケート人生でも自信を持っていちばんいい練習を積めていますと言えるぐらい、すごくいい練習を積んでいましたので、それを超えられるぐらいの練習量をまたさらに2週間積んで、スケートアメリカでまたいい演技ができればいいかなと思います。
―― トリプルアクセルの確率がいまいちばん高いとを公式練習の時にお話しされていましたが、試合を終えてみて、その自信は本物だったなと?
渡辺 そうですね、一応3本まとまってはいますので。いまの目標は他のジャンプも含め全部揃えることだと思いますので、しっかり自分を追い込んで、全日本までは2ヵ月弱ありますけれども、スケートアメリカに向けて2週間しっかりやっていければいいかなと思います。
―― 今回決めたアクセル3本の出来でというと?
渡辺 今日の1発目のアクセルがいちばん良かったかなと思います。そのぶんトウループを一瞬付け忘れて、ああやばいと思ったので、そこでトウループはつまずいてしまった部分はちょっといただけないと言いますか、何してんねんと思いますけど。ただ試合で出るものがすべてだと思いますので、(練習で)百発百中跳べるといっても試合でできなかったら何の意味もないと思います。全体的にはまずまずやと思いますし、スケートアメリカまでの課題も見つかりました。ただこの1、2週間の練習は嘘ついてないなっていうのは分かったので、しっかり同じように練習していければいいなと思います。
―― 昨日の会見で、アリサ・リュウ選手が感極まって、隣にいた渡辺選手、アンバー・グレン選手も来るものがあったのかなと思ったのですが、アリサ選手の話を聞いて、どう感じられましたか。
渡辺 私の立場で言っていいことなのかは分からないんですけれども、世界チャンピオンでもああなるんだしという思いもありますし、それが世界チャンピオンだからこそだとも思う。私はべつに世界チャンピオンになったことあるわけではないので、ただ通ずるものはありますので、世界チャンピオンでもこうなるんだなというのはちょっと思いましたね。
女子6位 松生理乃「練習してきたことは間違いじゃない」
―― 演技を振り返っていかがですか。
松生 ジャンプに関しては、最後のサルコウはちょっと悔しい部分もあるんですけど、それ以外は自分が練習で跳んでいたようなジャンプが出せたんじゃないかなと安心した矢先に、ちょっと何でかわからない転倒があって、演技を「よかった!」という形でまとめることができなかったのはすごく悔しいです。やっぱりショートでもフリーでも、何かレベルを落としたんだろうなとか、何かを引かれてるんだろうなという点数だったので、そこは本当に悔しいですし、今日こそはと思ってやっていた部分があったので、点数的にはやはりものすごく悔しいという感じです。
―― ステップでの転倒については。
松生 何に突っかかったのかもわかっていなくて……。でも昨日のショートでステップのレベルを落としていたので、クラスターを丁寧にやっていて、1つ目のクラスターが終わって「よし」と思ったら、多分エッジが引っかかって。正直何が起こったのかわからなくて、バンってなって、でも曲は進んでいってしまうので、とりあえずできなかったクラスターだけ急いでやって、そこからは落ち着いてできたと思うので、よかったなと思います。ぶつけているんですが、いまはアドレナリンであまりわからなくて、多分大丈夫です。
―― (スピンが)レベル3にとどまったことはどうでしょうか。
松生 昨日取れなくて、改善しようと思って回っていたつもりだったので、何がだめだったのか、まだちょっと動画とかを見返してみないとわからないなって。最後は、ステップでこけてしまったのもあって、結構ぎりぎりで作ってある(プログラム)ので、「早く止まらないと」という焦りから最後止まり切れなかったこともあるのかなと。
―― 体力的な面で、転んで焦ったことの影響は。
松生 でも比較的、今日は最後になっても息切れしていることもなかったですし、6分間も、最後の1分くらいは休憩して本番に臨んでいたので、すごく息がきつくなっちゃったなということはなかったと思います。
―― スピンについては、やれることはできたうえで、ということですね。
松生 そうですね。改善しないといけないところはちゃんと変えてきたつもりですし、1日しかなかったけれど、改善するところはしてきたので、これで取れなかったということは、日本に帰ってから動画を見直したりして、もう1回レベルの取り方を考え直さないといけないと思います。
―― 演技直前まで本郷先生からアドバイスを受けていました。
松生 今日の朝の練習でループを失敗してしまって、いちばん最初で大事なジャンプなので、(演技の直前に)本郷先生には踏切りの注意すべきところと、自分にとって苦手意識のあるルッツの踏切りについても手を持って、「ここは待ってから跳ぶ」とか、丁寧に話してもらっていました。演技後には、「ジャンプはよかったと思ったんだけどね」と言われて、でも点数を見ても課題がたくさんあるということがわかったので、「次に向けてだね」と言われました。
―― GP初戦を終えてみて、手ごたえと課題、どっちの割合が大きい?
松生 例年に比べたら演技全体を見たらよかったところも結構あるんじゃないかなと思うんですけど、それを超える悔しさだったり、やっぱり点数を出してもらえなかったという悔しさがすごく大きいので、演技的には練習してきたことは間違ってなかったかなと思うんですけど、改善点が山積みなんだろうと思います。
―― そのなかでも次戦につながる部分や収穫は。
松生 ジャンプが比較的、この試合では揃いやすかったので、ジャンプの部分の練習はこれまで通り続けていけばいいのかなと思うんですけど、それ以外のステップやスピンの部分が、今回は上手くいった部分がほぼなかったと言っていいくらいだったので、そこは練習の仕方も見直して、次戦につなげたいと思います。
女子10位 吉田陽菜「後半は思いきって滑ることができた」
―― 演技を振り返っていかがですか。
吉田 ジャンプが1回転や2回転になってしまったのがもったいないミスだったなと思うので、そういうもったいないミスはなくしたいです。やっぱりあるとモヤモヤした気持ちで終わってしまうので、絶対次のグランプリには直したいなと思うんですけど。でもそこは忘れて、後半は思いきって滑ることができたので、よかったかなと思います。
―― 気持ちが切り替えられた感じが?
吉田 そうですね。引きずっても意味がないというか、そのときを思いきり楽しんで滑らないともったいないと思うので、そこはしっかり会場の雰囲気も楽しんで滑ることができました。
―― トリプルアクセルは思いきって跳びましたが、跳んでみての感覚は。
吉田 6分間でも感覚はよくて着氷まできましたし、本番の踏み切り自体は全然悪いものではなかったので、本当にあとは降りるだけ。次の試合に向けてもう1回仕切り直して、がんばりたいです。(ループは)踏み切りでうまく右足に乗れていなかったのかなと思う。練習でもないミスではないので、練習でしっかり100%跳べるようにしたいです。
―― 気持ちの切り替え方は意識的にしているのか、普段からそこまで引きずらないのか。
吉田 後半の3本は結構自信があるジャンプで、前半にミスが出ても切り替える練習はしてましたし、ずっとトリプルアクセルを挑戦してきて、成功するか失敗するかに関係なく、そのほかのジャンプに集中するのはずっとやってきたことなので、そこはあまり意識せずに身についているものかなと思います。
―― 冒頭に大きいジャンプがあると、後のジャンプにプレッシャーがかかるというようなことはありますか。
吉田 試合で1本目のジャンプがどのジャンプであったとしても、やっぱり1本目がいちばん緊張すると思うんですけど、トリプルアクセルだと、緊張するというよりも思いきって行くだけなので、逆に緊張せずに思いきり行けるので、ルッツが1本目とか、2アクセル1本目のほうが緊張します。
―― 自分に合っている?
吉田 ずっとこれでやってきているということもあるかもしれません。
―― 楽しんでいるような印象でしたが、楽しかったですか?
吉田 そうですね。楽しかったですし、たくさんトップの選手がいるなかで一緒に滑らせていただいてとてもうれしいですし、貴重な経験だったなと思います。次のグランプリシリーズも楽しめるように、練習を精いっぱいして、挑みたいなと思います。
―― 改めて今季のテーマは。
吉田 力を出してやりきるというのがテーマなので、結果というより、自分が練習してきたものをしっかり出せるように、自信をつけていきたいです。
―― 「鶴」の衣裳を新しくしたと思いますが。
吉田 2年前は本当に鶴をそのままイメージして作ったんですけど、今回は和をテーマに、少し着物のような感じにしてみたので、前回は鶴で、今回は和に作ってみました。
―― グランプリ初戦を終えて、今回の収穫は。
吉田 ショートではしっかり自分に集中して、やるべきことをしっかりやるというのはできたかなと思っていて、フリーではやっぱり練習でたまに出てしまうミスが、試合で出てしまうのかなと思ったので、しっかりそこは詰めていきたいのと、でも前のジャンプに関係なく切り替えていけたと思うので、それは収穫かなと思います。
―― オリンピックシーズンの違いや難しさは感じていますか。
吉田 あまり難しいなとは感じていなくて、2年前はシニア1年目で出られるだけでうれしいという感じで、去年も思うようには行かない試合も多かったんですけど、自分のせいいっぱいの演技ができる試合もあったので。今シーズンは悔いなくやり切るということがテーマなので、全部悔いなくやりきったと思えるシーズンにしたいです。






