アンジェで開催中のフランス・グランプリ 2025 は 10月18日、2 日目を迎え、アイスダンス・リズムダンス、女子フリー、男子ショートプログラム(SP)、ペアフリーが行われました。女子のフリーでは、中井亜美選手(TOKIOインカラミ)がSPに続いて今季世界最高得点(フリー149.08点、合計227.08点)をマークし、GP初出場初優勝し、坂本花織選手(シスメックス)、住吉りをん選手(オリエンタルバイオ/明治大学)とともに日本勢が表彰台を独占。ペアのフリーでは、SPに続きトップを独走した三浦璃来&木原龍一組(木下グループ)がフリー139.71点、合計219.15点でグランプリ初戦を優勝で飾りました。選手たちの活躍は 12 月上旬発売の「ワールド・フィギュアスケート」104号にて多数の写真とともに詳しくお伝えいたします。
男子SPではイリア・マリニン選手(アメリカ)が105.22点で首位に立ち、ジョージアのニカ・エガッゼ選手が2位、日本の三浦佳生選手(オリエンタルバイオ/明治大学)が3位、壷井達也選手(シスメックス)が4位でフリーを迎える展開になりました。ここでは、試合直後ながらフランクで笑いにあふれる展開となった男子SP後のプレスカンファレンスのダイジェストをお届けします。
男子ショートプログラム後会見
―― イリア、105 点台というのはあなたにとっては普通の点数という感じだと思いますが、ネイサン・チェン(アメリカ)の世界記録 113.97 点(2022年北京オリンピックSP)を破るためには、自分には何が必要だと思いますか。
イリア まずはすべての要素について質を高めて、クリーンなプログラムを滑ることだと思います。シーズンのいいスタートが切れたし自信もあったと思いますが、考えてみるとあちこちうまくいかないところもあった試合でした。まだまだ進歩できると思えたし、ジャンプ、ステップ、スピンのすべての面でもっと洗練させていきたいです。
―― ニカ、3 週連続の試合の最後がこの大会でしたね。2 週前にアルマトイ(デニス・テン・メモリアル)、先週がトビリシ(トリアレティ杯)、今週はアンジェでしたが、この日程はどうでしたか。
ニカ ぼくがしでかした過去最大の失敗だと思います。(笑)どうにかして明日のフリーを生き延びることができれば、次の試合のスケートカナダまでに少なくとも 1 日は休めると思うので。ほんとに、二度とこんなことはしたくないよ。(笑)
―― 佳生、演技が始まる前に、日本女子が表彰台を独占したことをご存知でしたか。
佳生 結果は知っていましたし、とにかく亜美ちゃんがえぐすぎて、ぼくはちょっとびっくりしたんですけど。自分としては自分のやるべきことをやって、少しでもいい結果に仕上げられたらと思っていたので、あまりプレッシャーにはなっていないです。
―― ニカ、そもそもなんでそんなスケジュールに? 今回は自己ベストを出しましたが。
ニカ いい状態で試合ができたし、今日の演技には満足しています。ちょっと疲れてるけど、この試合に来られてよかった。なんといってもこれがぼくの仕事なんだからね。こんな日程にしちゃったのは、開催地しか見ていなくて日付をちゃんと見なかったせいで、連戦だって気がつかなかったんだ。連盟が送ってきたエアチケットを見たときに初めて「マジか」ってなったんだよね。しかも全部違う航空会社で、マイルも貯められなかったよ……。
―― イリア、今朝の練習で4回転アクセルのコンビネーションジャンプを練習していましたよね?
イリア 一応、今シーズンのプランのなかに4アクセルのコンボも入っているんだけど、自分が成功率に自信が持てると思ったら構成に入れるだろうし、オリンピックでも挑むかもしれない。
―― イリアにもう1問、2020 年ごろにこれからの選手として登場したときと比べて、いまの精神状態はどんなところが変わりましたか。
イリア 2020 年は、たぶんぼくの最初のシニアグランプリの年だったんじゃないかと思うけど、シニアの大きい試合に出られるなんて、ずっとわくわくしていた覚えがある。ネイサン・チェンとか、そういうすごい選手たちと同じ試合に出られてうれしかった。当時からいままでを思い出すと、自分がここまで頑張ってきた努力と献身を誇らしく思います。
―― 佳生に質問、壷井達也選手が「今日の出来の 70%は佳生くんが作ってくれた料理のおかげ」と話していたけれど、もう少し詳しく聞かせてもらえる?
佳生 ホテルの近くにスーパーがあって、そこに 2 人で行ったときに、お肉うまそうってなって、肉を買ったんですよね。で、その肉を、ホテルの部屋にキッチンがあるので、初日は塩と胡椒で食べて、2日目はニンニク醤油で美味しくいただいて、ぼくが料理と洗い物をして、たっちゃんはお皿をもってくるだけだったので、まあもうちょっと仕事してほしいかなって思ってます。(笑)今日は(試合後なので)普通に持ってきたものを食べます。お米。
―― イリア、最後に負けを喫した試合がおそらく数年前のフランスだったと思うのですが、そのことは今回のモチベーションにつながりましたか。
イリア それほどここでの試合を特別視してたわけじゃなくて、いつもどれだけ氷上で自分らしくクリーンに滑れるかを目指して、毎回進歩しようとがんばっているので、どちらかというと自分との戦いという感じです。
―― イリアと佳生はメッセージアプリで試合のたびにお互いを応援していると聞いていますが、同じ試合に出るときはその関係性は変わりますか。
イリア 佳生と戦うのはいつもすごく楽しい。彼はすごく面白くてエネルギーにあふれたスケーターで、同じ試合だとぼくもエネルギーをもらえるんだ。人間としても最高だしね。それにぼくはいつだって誰かを励ましたい、助けたいと思っているタイプで、佳生に何か聞かれたらできるだけフィードバックしたいし、ぼくらはとにかく仲がいいから、彼がいいシーズンを過ごしてくれたらと心から祈ってるよ。
佳生 とくに……まあ彼はちょっと異次元なとこにいるのであれなんですけど、もちろん彼の技術はトップオブトップだし、そこに彼の人間性というものも素晴らしいものを持っているので、ぼくはその双方をリスペクトしていて、彼からやっぱいろんなものを吸収したいし、見習っていきたいと思う。そこはどんどん彼に聞いて、試合期間中でも彼はすごくアドバイスをくれるし、すごい優しいなっていつも思っています。
―― ニカ、ジョージアの伝統音楽をプログラムに選びましたが、これについてはオリンピックを意識して?
ニカ 最初はジョージアのジュニア選手に「こういう曲はどう?」と勧める立場だったんですけど、違うかなと言われて、改めて「自分がこの曲で滑ったらどうだろう」と思い始めたんです。振付のブノワ・リショーにこの曲のことを伝えたら、ブノワも気に入ってくれて、この曲でやってみることになりました。ジョージアの伝統音楽で滑れるのは、すごく自分自身の魂に近いものを感じて、いいなと思っています。
―― イリア、いま自分の状態としては 80%くらいだと試合の前に話していましたが、SPの演技は非常にしっかりした内容でした。フリーに向けては?
イリア 自分ではせいぜい 50%くらいって感じで、SP でも本当に疲れてしまったし、今週は肉体的にも精神的にもきつい 1 週間だった。いろいろ問題があったんだ。でもここで戦えるだけのエネルギーを生み出せたのはすごくよかったと思います。次はスケートカナダです。
フランス・グランプリの男子フリーは、10月19日(日)13:20(日本時間20:20)から行われる。