オール倉敷ロケの映画。高橋大輔らが初日舞台あいさつ
映画「蔵のある街」は、倉敷に住む主人公の高校生たちが花火の打ち上げに奔走する、ひと夏の青春物語。山田洋次監督の助監督を長年務めた倉敷市出身の平松恵美子が監督・脚本を務め、倉敷の美しい街並みや風景が映画全体を彩る。倉敷公開初日の上映を終えた午後6時40分、映画を鑑賞したばかりの満場の観客の前に、平松恵美子監督、ダブル主演の山時聡真と中島瑠菜、高橋大輔、前野朋哉が登場し、本作への思いを語った。
友人との約束を果たすために花火を上げようと奔走する高校生・難波蒼役を演じた主演の山時聡真は、映画「君たちはどう生きるか」の主人公の声を担当して注目された20歳の実力派で、本作ではオーディションを突破して主役をつかんだ。「ここに入ってきたとき、みなさんの温かい拍手と表情を見て、やっとこの作品を皆さんに届けることができたんだなという実感がわきます。今日ヒット祈願をやってきたんですけれど、この綺麗な倉敷と皆さんに支えられて作れた作品なんだなと改めて感じました」と公開初日を迎えた気持ちを感慨深げに話した。
蒼の幼馴染みで、家庭の事情で夢をあきらめようとする高校生・白神紅子役を演じ、ダブル主演を務めた中島瑠菜は、「本当にたくさんの方に初日から見ていただけてうれしい。風船リリースのときに、『この後、私たちも行くよ』と言ってくださる方もたくさんいらして、すごく温かくて、うれしいなって気持ちです」とほほ笑んだ。
高橋大輔は映画初出演で、若者たちをサポートする大原美術館の学芸員・古城役を演じた。初めての舞台あいさつに立った気持ちを聞かれた高橋は、「全然場慣れしていなくてですね。すごく緊張しているんですけれども、本当に素晴らしい作品に出させていただいて、ぼく自身も貴重な体験をすることができました。本当に素晴らしい映画に出演することができて、しかも、故郷を舞台にした映画ということで、本当にぼくは幸せ者だなというふうに思っています」と答えた。
ジャズ喫茶のマスター・中桐仙太役の前野朋哉は、司会から「同じ倉敷出身で同級生の高橋大輔さんと一緒に舞台あいさつに立つのは貴重な機会なのでは?」と聞かれると、「めちゃくちゃ貴重ですよね!」と大きくうなずく。すると、「こちらのほうが貴重です」と恐縮する高橋。前野が「じつはチボリ公園での成人式が一緒だったんです。あのとき、高橋さんがおられて、『わあ、高橋さんだ!』って思って。以来、まさか映画で共演するとは思っていなかったので、こんな未来があるのを、学生のころの自分に教えてあげたいくらい、本当感慨深いです」と話した。
「自分の演技でいちばん印象に残っているシーン」という質問に、山時は「集会所のシーン」と答え、「もともとは涙を流すようなシーンではなかったんですけど、ぼくがその前のシーンで自信をなくすようなことがあって、監督からリベンジマッチとして、わざわざテイストを変えていただいたシーンなので、すごく思い入れがあります」と説明した。中島は「紅子の家でお兄ちゃんと食卓を囲むところ。お兄ちゃんがこんなに成長したんだなっていうのに気づくシーンがすごく好きです」と答えた。
いっぽう高橋は、「すべてぼくにとっては印象的なシーンではあったんですけど」と前置きし、「いちばん難しかったなと思ったのは、居酒屋で紅子のお父さん(白神蓮介役の長尾卓磨)と言い合いをするところ」を挙げた。「今回ぼくが出演しているシーンのなかで、いちばんたくさん感情が出るシーンだったので、思ったより感情のほうがあふれ出てしまって、セリフが飛ぶという状況に陥ってしまって。(撮影終了時間が決まっていたため)時間もなく、すごく焦ったんですけど、そんな大変なシーンは自分にとって苦い経験でもありながら、1つ成長できた経験だったんじゃないかなと思った」
さらに、「皆様温かく見守ってくださったので、なんとか焦らずにできたんですけれども、長尾さんは本番になると、がらっと雰囲気が変わって、ガーッとなったときにすごく押されて。その前のどこかのシーンで(長尾さんが)障子を破ったみたいな話を聞いていた」という高橋は、「後ろに障子があったんですけど、『絶対破っちゃダメだ』って思って、そこだけ必死に何とか阻止しました」と明かした。
平松監督は、高橋の演技指導について、「基本的にはあまり指導ぽいことはしていなくて。1日に撮る分量がものすごく多かったからというのもあるんですけど、ただ、このシーンはこういうことを思い浮かべて、ちょっと顔を上げて想像するようなふうにしてくださいとか、そういうことは何ヵ所かあったと思います」と話した。