宇野昌磨「胸を張って“すべてが見どころ”と言える」
終演後、宇野昌磨さんがメディアの取材に応え、初日を終えての手応えを語りました。
―― 初日を終えて。
宇野 いまこうして、世界選手権で2度目の優勝をしたときよりもたくさんの方に囲まれていることに驚きです――それは、置いといて。(笑)アイスショーを一から作って、ぼくだけの力では絶対にここまでのクオリティにはならなくて、たくさんの方にいろんなサポートをしていただいた。ビジネス的なものだけでなく、やらなければいけないこと以上のことをみなさんがたくさんやってくださって、本当に素晴らしいショーになったと思います。たった7人で、この時間の、このクオリティのショーをやるのって、7人だからこそできることでもあり、7人だからこそめちゃめちゃ大変ではあると思うんですけど、みなさん最後までついてきてくださって、素晴らしい初日を迎えることができました。そして、本来であれば、これだけハードなアイスショーはなかなか最後まで体力がもちにくいんですが、たくさんの方の拍手や歓声が――もちろんみなさんを楽しませるために、ぼくたちはやっているはずなんですけど、みなさんの拍手や大きな歓声でこっちが楽しくなって、お互いがWin-Winのショーができていたんじゃないかなと、すごくうれしく思います。
―― 印象的なシーンについて。
宇野 いま、終わっていろいろ考えていたんですけど、「Ice Brave」は休憩する場所がないというか。もちろんどのショーもすべてが見どころだと思うんですが、すべてにすごくたくさんの時間を割いて作ったので、ぼくがもちろんメインではあるんですけど、この7人全員が、引き立て役とかではなくて、全員がそれぞれの個性をより引き出した7人のメンバー、仲間たちだと思っているので、あまり「これが見どころです!」というのは……。胸を張って、本当に、「全部です!」と言える感じです。
―― アイスダンスの出来栄えについて。
宇野 シングルとアイスダンスでは、やってみてわかったんですけど、いろんな勝手が違って、自分が培ってきたスキルが本当に1割とか2割とか、その程度しか引き継ぐことができなくて、いろんなことが本当に難しかった。ただ、「ちょっとリフトをやって、ちょっと組んで」というコラボナンバーとしてではなくて、初めてアイスショーをプロデュースするということで、自分の新しい挑戦をしたかった。しかも“やってみた”だけではなくて、ちゃんとプログラムとして成立するものをやってみたかったので、もっともっと成長できるなという自信もあるいっぽうで、よくがんばったなと思います。みなさんの拍手がすごくうれしかったです、素直に。今日までやってきた練習を褒められたような気持ちになって。シングルのときは、自分がやっているものを培ってきた年月があって、あとは結果がどうなるかというので、緊張したりもありましたが、声援や拍手がここまで助けになる瞬間はなかなか味わえないなと、すごく気持ちよく滑らせていただくことができました。
―― 地元愛知で開幕したことについて。
宇野 最後にはけるときにも、これだけ多くの方がぼくたちのショーを観に来てくださっているということが、すごくありがたいなと。観に来ていただいた人に素晴らしいものをお届けするために、すごく長いリハーサルを組んで。初めてのことばかりだったので、不手際もたくさんありながらも、試行錯誤して、いろんな方の助けを借りながら、今日をこうやって迎えられたこと、そして素晴らしいものができたこと――ぼくがこうやってすらすら「素晴らしいもの」と言えるということは、いまできる最大限ができた証拠かなと思います。
―― 過去のプログラムを滑ってみて。
宇野 このショー自体のコンセプトが、自分の現役のときのプログラムをメインにしていて、自分の過去のプログラム、そしてそれを現在の自分がやる、そして新たな挑戦――アイスダンスも含め、「Narco」という、ダンサーの方に振付けてもらったプログラム。スケートの技術のみを毎日磨いてきたので、自分が疎かにしていた部分に改めて挑戦していて。だから、過去、現在、そしてこれからいろんな第1歩を踏み出すという意味で、この「Ice Brave」というショーを作り上げていて。質問の答えにはなっていないかもしれませんけれども、すべてにいろんな思い入れがあって、「これ(プログラム)めっちゃ苦労したな。じゃあ、ステファンにやらせよう」とか(笑)、「ボレロ」はいちばん1年間で完成したなと思えたプログラムだからやっぱり最後に持ってくるとか、「See You Again」はめっちゃ昔に作ったナンバーなんですけど、長く使っていてすごくいい演目だったり、本当にいろーんな演目、いろんな種類をやってきて、振り返ってみると、改めて自分はこれが得意で、これが苦手なんだなという発見はありました。でも、ぼくが出ていないナンバーをみんなに教えるときに、自分がどうやっていたとか、ここができないんだとか、どうやって教えるのがいいのかと、貴重な経験をさせていただきました。
―― これだけ追い込んで練習して、現役が恋しくなったりはしないですか。
宇野 まっったくないですね、正直。いままでシングルの現役は毎日追われるような、やっぱり「競技に向けて」という練習で、それも素晴らしいこと。正直、現役恋しい、恋しくないとかではなくて、1人で滑るということが寂しかったです。「ロコ」だけソロで滑っているんですが、他のショーをやったときもそうでしたけど、ぼくはみんなで一緒に作っていくのが好きで、仲間と同じ方向に向かって作り上げていくというほうが、いまはやりがいとか、好きだなと思いました。
―― ステファンさんの滑りについて。
宇野 いま40歳で、めちゃめちゃ元気ですよね。40歳であのクオリティを。だって、ぼくがやっていた現役のプログラムをやらされるんですよ!? すごいことですよね。本当に滑っていて、すごいなと思いました。あとは、ステファンが合流するまでにもみんなでやっていたんですけど、ステファンが合流して、より明るくなったというか、笑いが絶えない空間になった――と同時に、リハーサルが進まなくなりました。冗談も入ってますけど。(笑)それぐらいすごく楽しい空間になった。ステファンは覚えもはやくて、真剣にやってくれて、このショーのために多少無理をしてでもいいものを作ろうという意志が見えるのが、すごくうれしいなと思います。ぼくのコーチという域を越えて、どちらかというとコーチのときから友人に近い立ち位置でしたが、そういう存在だなと改めて思いました。
―― アイスダンスはいつごろからやりたいと?
宇野 去年の10月ごろから、エッジと靴を替えたりとか、やっていました。そこからスタートして、毎日毎日というわけではないですけど、合間にできるときにやりながら。このアイスショーをやるという時点で、アイスダンスは1曲入れたいと思ってやらせていただきました。
―― ソロナンバーに「ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード」、ステファンさんとのナンバーに「Legends」を選んだ理由について。
宇野 これまで「ロコ」をやらなかった理由として、当初の「ロコ」がけっこう気に入っていたので、いますぐやってもあのときのクオリティを出せないと思っていました。でも年月が経って、いまならではの「ロコ」が出せるのかなという思いがあったので、「ロコ」を選ばせていただきました。この「Ice Brave」というのが、自分のいままでのいろんな思い入れのある軌跡、そして観る方にも思い入れのある演目をたくさん入れたくて、すごく記憶に残っているプログラムだったり、逆に全然できなかったプログラムを選んでいるので、「ロコ」を選ばせていただきました。「Legends」は、評判がいいと聞いたので……。いろんなスケーターも「Legends」が好きって言ってくれるので、みんなが言うなら入れるかと。(笑)ステファンとは「Gravity」を一緒に滑るとかいろいろ案はあったんですけど、いい演目で人気もある「Legends」がいいと決まった感じです。
―― アイスダンスの現役に興味は? 見ているほうは興味が湧いてしまいますが。
宇野 このアイスダンスをやるとなったときに、“コラボナンバー”として見られたくないという思いがすごくあったので、そういう質問がいただけるのは、ぼくたちにとってはすごくうれしいです。アイスダンサーは、本当にみなさんレベルが高くて素晴らしいものをやられているので、アイスダンサーとして遜色ないとまで言ったら失礼ですが、素晴らしいものを2人で、このアイスショーで、作れたらいいなと思います。