「東和薬品presents 羽生結弦 notte stellata2025」が3月7~9日、宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)で開催されました。東日本大震災の被災地であり、羽生結弦さんの地元でもある宮城県から、鎮魂と祈りや希望をこめて行われるアイスショーで、今年が3度目の開催。スペシャル・ゲストとして狂言師の野村萬斎さんが登場、羽生さんとコラボレーションを披露しました。
「MANSAIボレロ」「SEIMEI」で共演
「notte stellata」はイタリア語で「満天の星」を意味する。2011年3月11日、地元仙台で東日本大震災を経験した羽生結弦が当時見上げた星空と、のちに羽生がエキシビションとして演じたプログラムの楽曲名を重ね、被災地への希望と祈りを届けるアイスショーに冠した。
3年目を迎える今年も、先頭に立つ羽生をはじめ、ハビエル・フェルナンデス、ジェイソン・ブラウン、シェイリーン・ボーン・トゥロック、宮原知子、鈴木明子、田中刑事、無良崇人、本郷理華、フラフープを操るビオレッタ・アファナシバと、昨年と同じメンバーが再び集結。さらに、「notte stellata」には開催の意義に賛同するかたちで毎回さまざまなフィールドからスペシャル・ゲストが参加してきたが、今回は狂言師の野村萬斎が初登場した。
スペシャルコラボレーションでは、2011年に初演され、野村萬斎が鎮魂と再生の物語として構想した「MANSAIボレロ」を羽生らスケーターとともに初めて東北の地で舞った。ラヴェルの名曲と能楽の「三番叟」の舞を土台に作り上げ、静かに氷上に姿を現した野村萬斎がリンク中央の舞台に座したところからリズムが鳴り始める。舞台の周りで舞うスケーターたちと呼応しながら、扇や袖を美しくさばき、最後は「三番叟」の烏飛びから着想を得たというステージからの大ジャンプで締めくくられるなど、伝統芸能の様式美がちりばめられている。その呼吸に応える羽生は、乳白色の神々しい衣装に身を包み、長い袖や裾をなびかせながら氷上に現れる。格式高い滑りでスケートの醍醐味を作品に加えてコラボレーションを完成させた。

さらには羽生がオリンピック2連覇、スーパースラムを達成したときに滑った代表作の1つであり、野村萬斎主演の映画「陰陽師」の音楽を使用した「SEIMEI」を2人で披露。「SEIMEI」では、野村萬斎が「天・地・人。出現 羽生結弦 急急如律令」と形代に呪文を唱えると、式神さながらに羽生が顕現してプログラムが始まるなど、コラボレーションならではのスペシャルな演出で、会場、ライブビューイング、配信で見守る多くの観客たちにサプライズを届けた。
初日7日の終演後、座長を務める羽生結弦、スペシャル・ゲストの野村萬斎が取材の場で語った、公演にかける思いやコラボレーションの舞台裏を全文掲載。東日本大震災から14年が経つ今日、11名のキャストが被災地から届けた鎮魂、希望、エール……すべての思いに、そして2人の言葉に触れて、「3.11」に祈りと想いを巡らせたい。
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