「ビビを思い出した」と賢二先生が感極まっていた
―― 初演から再演までの間、今年1月に現役引退を発表されました。改めて、選手生活お疲れさまでした。プロスケーターになって、ご自身にもいろいろな変化があったのでは？
本田 去年、『ワンピース・オン・アイス』の横浜公演と名古屋公演のあいだにフリーの「リトル・マーメイド」を賢二先生に作っていただいたんですが、振付のときに私が自然と歌詞を口ずさみながら滑っていたら、賢二先生が「ビビを思い出して胸が熱くなった」と言ってくださったんです。私自身、そんなふうに滑れたことはなかったので、『ワンピース・オン・アイス』が現役スケート選手としての自分に与えてくれたものもすごく大きかったと思います。選手として最後のシーズンだったんですけど、心からスケートが楽しいと思えた瞬間でもあったので、あの時期に『ワンピース・オン・アイス』ができて現役選手としての私にとってもよかったです。今年1月に引退してから、スケート以外にもいろんなことを経験させていただいていて、いろんな方向、ジャンルに頭を使う日々ですが、自分はスケートがいちばん好きだなと思いますし、スケートリンクの上で滑っている自分がいちばん輝いているなと思う。だからこそ、プロとしてもっと上達した姿をお見せしたいと思いますし、私自身も楽しみにしています。
―― メディアでのリポーターなど活躍の場が広がっていますね。先日、プリンスアイスワールド鹿児島公演に取材に伺った際に、本田さんが振付けた宇野昌磨さんの「The Spectre」を拝見しましたが、素晴らしかったです。
本田 じつはあのプログラムは、元々はみなさんの前でお披露目するプログラムとしては作っていなかったんです。振付を頼まれたとき、楽しくスケートを続けて欲しいなというところから、たくさん練習しないとできないくらい難しいステップを考えて、練習時間の最後とかにお楽しみとしてやってくれたらいいなという気持ちで少しずつ作っていきました。なので、後２曲ほどパートだけ作っているコミカルプログラムもあったりします。スケーターのみなさんが凄いと褒めてくださったのがとてもうれしかったですが、何よりあんなふうに素敵に滑ってくださるのがスケーターとして流石だなと尊敬しています。
―― 役への入り込み方や、振付を長くかけて作ることもそうですが、とてもストイックに取り組んでいらっしゃるんですね。
本田 『ワンピース・オン・アイス』に関しては、アラバスタ編もビビちゃんももともとすごく好きで、ビビ役は相当な責任があると思って臨みましたし、みんなが120％で日々練習しているなかで、なんなら引っ張っていけるくらいにならないといけないキャラクターだと思っているので、本当にがんばっています！
―― 前回、観客の方からのリアクションでとくにうれしかったことはありますか。
本田 長い髪の動かし方を褒めていただけてすごくうれしかったです。感情的な役作り以外の部分では、髪の毛の先まで意識を行き届かせるつもりで、ポニーテールをどう操るか、髪の動きでどうビビちゃんらしさを表現するかは本当に意識していました。もともとは滑りやすさに配慮していただいて、もう少し短い髪だったんですけど、「もっと長くて大丈夫です！」と言って、どんどん髪を伸ばしてもらっていました。（笑）
―― では最後に、今年の『ワンピース・オン・アイス』の楽しみ方を教えてください。
本田 スケートを見たことがない方にも最初からスッと『ONE PIECE』の世界に入って楽しんでいただけるのが『ワンピース・オン・アイス』なんじゃないかと思いますし、スケートファンの方々にも、普段の私たちとはガラッと違うキャラクターや、スケートファンの方だからこそすごいと思っていただけるポイントもたくさんあると感じています。再演では、私たちも楽しみなんですが、きただにひろしさんが生歌唱してくださるんです。きっとリハーサル期間もすごく長いので、その分絶対に去年よりもっともっとパワーアップした『ワンピース・オン・アイス』をお楽しみいただけると思います！
―― 本番を楽しみにしています。本日はありがとうございました。
（2024年7月中旬、都内にて取材）