男子は3人ともオリンピックの表彰台に乗れる力がある
―― 男子の試合については?
ジャッキー そう……ナーバスな試合だったと言えるかな? ほとんどの選手が緊張していて、例外は佐藤駿だけ。駿だけが「自分はオリンピック代表になるんだ」と覚悟を決めた演技だったと思います。長年見てきたけれど、彼は練習では軽々跳ぶのに、試合になると硬くなってしまうことが何度もあった。回転不足やパンクはその表れで、今回も少しありました。でも脚の怪我でジャンプを跳べない時期があったことを思えば、ここまで戻したのは驚異的です。自信を取り戻して、シーズンをいい形で終えてほしい。(三浦)佳生は、前半は完璧で、後半は必死に耐え抜いた。よくやったし、この試合はそれで十分。代表にふさわしい戦いだった。

(友野)一希には本当に胸が痛みました。ウォームアップから緊張が見てとれて、それが最後まで抜けきらなかった。彼は最年長でしょう? 年を重ねるごとに、人は「残された時間」を意識するようになる。この競技を、これほど高いレベルで、あとどのくらい戦い続けるのかということを。それが気にならない人もいれば、プレッシャーが増してしまう人もいる。今季の彼は、このシーズンに全身全霊を懸けて、やれることはすべてやったと思う。オリンピックの出場枠もすぐ目の前にあった。でも、最後は恐らくメンタルの面で壁を超えられなかった……。結果論だけど、練習初日に彼がほぼノーミスの通し練習を滑り切ったのを見たときは、これは行けると思ったんだ。でも練習を重ねるごとに緊張が増していってしまった。ぼくも残念だったし、悲しかったよ。

(鍵山)優真は、結果的にここで完璧な演技ではなかったことは、ぼくはある意味でよかったと思います。ミラノで完璧に滑ってほしいからね。彼は学んでいる最中で、ちょっと考えすぎなんじゃないかなと思うような局面もあった。いずれにせよ、男子の日本代表は3人とも表彰台に乗れる力がある。オリンピックが楽しみです。

(山本)草太は怪我が大変なシーズンだった。草太のことは何年も見てきたけれど、練習と試合がすごく違うなと思うことが多くて、練習ではこともなげに軽々と跳んでいるんだけど、試合では緊張してしまって、確信を持った滑りが見せられない。今回もそういう展開だったと思います。彼が足首の怪我をしたころをいまもよく覚えているけど、トリプルがまともに跳べない状況から、よくここまで4回転を戻して、復活してきたと思うよ。4回転フリップも一時跳んでいたよね? 彼の忍耐力がどれだけ強いかを示しているし、今シーズン、四大陸選手権に選出されて試合で滑ってくれること、納得のいく形でシーズンを締めくくってくれることを願っています。

―― ところで、どうして全日本選手権のために来日しようと?
ジャッキー 来ない理由がない。(笑)日本にはよく来ているんです。京都を訪れたり、北海道でスキーをしたり。でも今回は、全日本が見逃せないと思った。今季最高の試合のひとつだし、オリンピックシーズンの全日本は特別。女子の試合を見るだけで価値があったし、ペアも継続的に成長している。三浦璃来&木原龍一に加えて、日本には長岡柚奈&森口澄士という世界最高レベルのペア2組目がいて、さらに3組目もいる。三浦&木原については、彼らが結成して2、3ヵ月のころ、コーチに就いたメーガン・デュハメルから「このペアを見てみて」と連絡をもらって、カナダのオータム・クラシックに見に行ったことがあるんだけど、「これは伸びる」と確信した。その通りになりました。いまや複数回の世界チャンピオンで、オリンピックの最有力メダル候補なんだから。
―― 大会のあとは日本に滞在を?
ジャッキー 明日の朝の便で帰国するよ! 本当に全日本のためだけに来たんです。(笑)
―― 全米選手権が1月に始まりますが、オリンピックへ向けた展望を話してもらえますか。
ジャッキー 女子は比較的予想しやすいけど、それでも簡単ではない。アンバー(・グレン)、アリサ(・リュウ)、イザボー(・レヴィト)は実績的に有利。大崩れがなければ、その3人で決まりでしょう。男子は、イリア(・マリニン)以外は混戦です。ジェイソン(・ブラウン)は有利だけど、まだ確定ではない。トモキ(樋渡知樹)、アンドルー(・トルガシェフ)、マックス(マキシム・ナウモフ)が争っている状態ですね。
ペアは本当にわからない。枠は2つで、国籍の問題も絡んでくる。現時点では1枠目はカム&オシェイが有力だけど、残り1枠をどこのチームが取るか。アイスダンスも予想がつかない。ジンガス&コレスニクは国際的評価が高いから、(チョック&ベイツに続く)2枠目は堅そうですね。最後の枠にどの組が入るか、全米のアイスダンスは何が起きるかわかりません。
(2025年12月21日、全日本選手権女子フリー後に取材)
