甥・織田信義と同じ大会に出場
シニアとジュニア、カテゴリーは異なるが、近畿選手権、西日本選手権と同じ大会に出場していたのが、織田信成の甥・織田信義だ。かつて信成は、信義のことを「技術的にはもちろんまだまだな部分もあるんですけど、スケーターとしての覚悟とか集中力がすごくよくなってきている。一緒に練習したりもするので、互いに励ましあいながら、ぼく自身も彼の演技からめちゃくちゃ刺激をもらっている」と目を細めて話していた。いっぽう、新体操やロックダンスにも取り組んでいる高校3年生の信義は、「陸上と違って速さの緩急だったり、陸上でできないポージングだったり、表現の幅広さがフィギュアスケートの魅力だと思っています。まだまだ全然使えていないんですけど、いろいろな感情を表現できるスケーターになりたい。ジェイソン・ブラウンさんとか120%のポテンシャルを使えている選手の演技に感動します」と話す。親しみをこめて「信成」と呼ぶ叔父のことを「スケーターとしての目標であり、すごく尊敬するコーチ、選手」と語り、西日本を制して全日本に出場を決めた叔父へ「人生最後の競技としての大会(全日本)だと思うので、花火みたいに華やかに舞っていただければなと思います」とエールを送った。
長男の言葉に号泣した織田信成
12月19日午後、11年ぶりの全日本選手権を翌日に控え、公式練習に臨んだ織田信成は、痛みと戦ってきたとは思えないほどになめらかな着氷で、4回転+3回転を決めてみせた。泣いても笑っても、この全日本は毎日が”ラスト”だ。
普段はほとんど試合もアイスショーも見に来ない家族が、みんな見に来てくれる。たぶん日頃何をしているか全然知らないと思うので、こういうことをしているとしっかり家族に伝えたいなと思います。ジャンプが決まろうが決まるまいが、結果はどうあれ、やっぱり最高の笑顔で終わる大会にしたいなと思っています
近畿選手権で、織田は「上の子どもたちが反抗期で、見に来てくれないが、全日本には絶対見に来てもらいたい」と熱望していたが、それが実現することになりそうだ。
上の2人は、ぼくが引退したときはまだ2、3歳だったのでアイスショーもほとんど見たことがなくて、そのまま大きくなってしまったので、ぼくがスケートをしている姿を見たことがないと思うんです。今日は、自宅から来たんですけど、今日初めて長男に「試合がんばってな」って言われて……もうちょっとそれで……(号泣しはじめる)。ちょっと待って、ここで泣くつもりはなかった、長男の話するんじゃなかった!(涙)ちょっと長男が反抗期とかもあるので、それですごくうれしくて、その時は涙我慢しちゃったんですけど……。そういうふうに家族も応援してくれるので、精一杯がんばりたいと思っています
取材陣に囲まれて心境を話していた織田は、みるみるうちに、顔をくしゃくしゃにして涙をこぼす泣き顔に。全日本という場でこのトレードマークの表情が見られるのもまた、今回がラスト。「37歳、思ったより体きついぞ」という困難をいくつも越え、たゆまぬ努力とコンディション管理でここまでたどり着いたからこその、最後の大舞台だ。公式練習後に行われた開会式では、代表して選手宣誓を任され、80名以上の後輩たちを背負って誓いを立てた。さあ、舞台は整った。
全日本選手権の男子SPは20日、男子フリーは21日。織田信成の笑顔と雄姿、それから涙を目に焼きつけたい。
宣誓
私たち選手一同はスポーツマンシップにのっとり、正々堂々と競技することを誓い
日ごろから応援してくださる方々、会場へ足を運んで下さる方々への感謝を忘れず
また、環境や年齢を言い訳にせずに全身全霊で競技に臨むことを、ここに誓います