ミラノ・コルティナ・オリンピックの個人戦男子フリーで、佐藤駿選手(エームサービス/明治大学)が銅メダルを獲得しました。最後まで諦めなかった強い気持ちがもたらした、銀メダルの鍵山優真選手とのダブル表彰台。SP9位からのごぼう抜きで表彰台まで駆け上がった佐藤選手の戦いを、メダル確定後のコメントとともにお届けします。
喜びの涙とともに表彰台へ
メダルが決まった瞬間、佐藤駿は驚きの表情になった。銀メダルが決まって笑顔の鍵山優真が佐藤に抱きつき、喜びを分かち合おうとする。佐藤の驚きの表情は、すぐに感極まった泣き顔に変わった。今シーズンの佐藤が何度も見せてきた感情があふれ出るような涙が、目指してきた最高の舞台で、喜びの涙となった。
SPでは4トウ+3トウを4トウ+2トウにするミスが出て、たった1ミスで88.70点ながらも、それを上回る強豪揃いのなか9位スタート。団体戦のトリを飾って名を挙げたフリー「火の鳥」は、今季を通して非常に強さを発揮してきたプログラムだ。その信頼感と、大舞台のプレッシャーと、結果を追い求める自分自身との戦い……。さまざまな想いを背負いながら、個人戦フリーに臨んだ。落ち着いた表情でスタートポジションにつくと、冒頭の4ルッツを完璧に着氷。3アクセル+1オイラー+3サルコウも危なげなく決め、波に乗った。続く4トウ+3トウ、4トウでも高いGOEを獲得。3アクセル+2アクセル、3ループを挟んで、後半に向けては若干疲れがにじみ、3ルッツの着氷が乱れたものの、最後まで高い集中力を保ってほぼミスのない演技を滑りきった。
滑り終えて片手を上げるガッツポーズを見せた佐藤は、リンクサイドで日下匡力コーチに抱きしめられた。フリー186.20点、合計274.90点でこの時点でトップに立ち、ミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)が上回るまで暫定首位を守った佐藤。そして、最終グループでのイリア・マリニンのまさかの大ブレーキという波乱の展開を経て、佐藤がそのまま3位に踏みとどまるという、結果を見れば本人も予想しなかった大金星につながった。SPのあとの2日間、構成の悩みを三浦佳生と分かち合い、励まし合ったのだという。諦めない精神と、篤い友情が支えたオリンピック銅メダル。表彰式で、両足ジャンプで表彰台に飛び乗った佐藤は、晴れ晴れとした笑顔だった。
順位決定後コメント「団体のいいイメージをそのまま持っていこうと思った」
―― 銅メダルを手にしたお気持ちは。
佐藤 本当に信じられない気持ちですし、夢なのかなというふうに思っています。
―― 演技が終わった後は、自分がメダルを獲れる位置にいると思っていましたか。
佐藤 まったく思ってなかったです。本当に自分のやるべきことはしっかりやれたので満足してはいたんですけど、終わった時点では点数がメダルに届かないと思っていたので、信じられない気持ちです。
―― マリニン選手の演技はどういう気持ちで見られていたのですか。
佐藤 本当に珍しいなと思って見ていました。今シーズンまったくミスがなかったので、やはり団体と個人というスケジュールをやってるというのもあったのかなと思うんですけど、そのなかでもしっかりと4Aに挑もうとする部分は本当にすごいなと思いました。マリニン選手のおかげで自分自身もここまで(高い競技レベルに)来れているので、これからもマリニン選手についていけるように頑張りたいと思います。
―― 鍵山選手の演技はどのようなお気持ちでご覧になっていましたか。
佐藤 練習からずっと一緒にやってきていたので、優真には頑張ってほしいなという思いで見ていました。
―― 4回転フリップを入れる可能性も話していましたが、構成はどのように判断を?
佐藤 正直ものすごい悩んで、昨日はもう本当に寝られなくて、どうしよう、どうするべきかっていうの考えました。まったく(プログラムに入れて)練習をしていないのもありますし、フリップはエッジも気になる部分があるということで、先生とも相談して、「駿の思った通りにやれば、それが正解だと思う」と言ってくれたので、団体のいいイメージをそのまま持っていこうと思って、いままでの構成でいくことにしました。
―― その判断をするときにメダルのことは考えましたか。
佐藤 あまり……正直メダルよりも、自分が笑顔で、観に来てくださるファンの皆さんにいい演技を届けたいという思いでやろうと思っていたので、本当にメダルのことはまったく考えていなかったです。
―― 自分が磨いてきた4回転を全部決めました。
佐藤 すべてのジャンプをいい形で決めきることができて、本当にうれしかったですし、練習からノーミスの演技を積み重ねてきていたので、それをしっかりと出すことができてよかったです。
―― 演技前は羽生結弦さんの動画は見られました?
佐藤 見てから来ました。ショートの時は見られなかったので、それが良くなかったのかなと。(笑)(ショートはグループのなかで滑走順が)1番で見れなかったのでそれが原因かなと思って、(フリーは)見てから来ました。
―― いつの大会の動画ですか。
佐藤 おすすめに出てきたやつをポンポンポンって感じで、今回はオリンピックのフリーを見たりとかして、気持ちを高めていきました。
―― いつ見たのですか。
佐藤 6分間(練習)の後に見ました。
―― 三浦佳生選手とは話をしましたか。
佐藤 佳生とはショートが終わってから、「どうしよっか」って感じで、やっぱオリンピックは難しいね、みたいなことを話していたんですけど、フリーは逆に何も考えずに行けると思うから頑張っていこうと。いいスタートダッシュを佳生が作ってくれたので、本当に良かったなと思います。
―― メダルを諦めないということもお話しされた?
佐藤 もう点差的にも厳しいかなと思っていたんですけど、「これは全然諦める点差じゃない」と強く言われて。駿はいけるから、ここまでノーミスしてきてるんだから、もうあとはやるだけだから、と。そこで結構自分のなかで決心がついて、自分は何しに来たのか、メダルを獲りに来たんだっていうふうに改めて思って、もう全部をぶつけようと滑りました。
―― 日下先生に銅メダルをプレゼントできたことに関しては?
佐藤 日下コーチにここまでたくさんお世話になって、このオリンピックでメダルを獲って恩返ししたいとずっと思っていたので、それを達成することができてほっとしています。

