グランプリシリーズ第2戦のカップ・オブ・チャイナが10月24日、中国・重慶で開幕しました。大会初日は、全4カテゴリーのショートプログラム(SP)とリズムダンス(RD)が行われ、男子では前回大会優勝の佐藤駿選手(エームサービス/明治大学)が1位、山本草太選手(MIXI)が4位、女子では渡辺倫果選手(三和建装/法政大学)が2位、松生理乃選手(中京大学)が6位、吉田陽菜選手(木下アカデミー)は11位発進。さらにペアでは北京オリンピック金メダリストのスイ・ウェンジン&ハン・ツォン組(中国)がチームとして3年ぶりの復帰戦を3位でスタートさせました。全種目のフリーは25日に行われます。
熱戦が繰り広げられたSPから、男女シングルの上位3選手によるプレスカンファレンスをお届けします。女子は、2位の渡辺倫果選手(74.01点)と、世界女王のアリサ・リュウ選手(74.61点、アメリカ)が1位、昨季グランプリファイナル優勝のアンバー・グレン選手(73.04点、アメリカ)が3位で登壇。リュウ選手が万感のパフォーマンスの後で感極まり、渡辺選手、グレン選手がもらい泣きで瞳を潤ませるエモーショナルな会見に。男子は佐藤駿選手(94.13点)と、2位のダニエル・グラッスル選手(90.42点、イタリア)、3位のミハイル・シャイドロフ選手(88.33点、カザフスタン)と、屈指のジャンパーたちが集結しました。
SP女子会見 渡辺倫果「自分に打ち勝つことができた」
―― 今日の演技の感想をお願いします。
リュウ 今日のショートプログラムではいろんな感情がこみあげてきました。説明すると、昨シーズンのこのプログラムの演技でいちばん気に入っているのは全米選手権のSPで、いちばん泣けて、いちばん感情移入したパフォーマンスでした。でも、ここだけの話、今回はそれを上回っていると思います。(涙をあふれさせながら)ショートのあとにこんなに涙が止まらないなんてことはこれまでなかったし。でも、すごくいい感じなんですよ。感情的ではあるけど、でも“いい意味で”だからね。
渡辺 ジョージアのチャレンジャーシリーズから、中1週間で中国に来たんですけど、すごく苦しい1週間だったと思います。ただ、その分すごく濃厚な練習を積むことができましたし、苦しかった分充実した1週間をすごすことができました。そのなかで、自分に打ち勝つことを大会の目標にして、このSPではしっかり自分に打ち勝つことができましたし、すごくいいショートだったんじゃないかなと思います。
グレン 中国に来るのはいつも素晴らしい経験になっています。初めてのグランプリも中国杯だったし、今回で4度目の中国杯です。アメリカからの旅はいつもかなり大変で、まあ、年齢的な意味で? 火曜日に26歳になったのでね。年々大変になるし、今日もベストな状態ではなかったけれど、練習がものすごくうまくいっていて、心身ともにしっかり整えてきたので、今日の演技を出せたと思います。満足です。
―― アリサ、涙の理由は?
リュウ 久しぶりにこのショートプログラムを滑ったからというのもあるんですけど……このプログラムは、普段の曲かけの通し練習でもときどき泣けてきちゃうんです。昨シーズンにも少し話していたんですが、このプログラムは私にとってすごく意味が大きくて、滑っているといろんなことを思うし、いつもよりプログラムに没入しちゃうみたいで。当然、入り込めばその分ずっと強く打ちのめされる。でも、今日、ふと気づいたん……です……どうして滑っているのか、なんで私はこうしているのかって。で、ここにいられることも、みんなと一緒に戦えていることも、全部……美しいことなんだって……
(ここで隣のグレンがもらい泣き)
―― あなたは泣かないで!
リュウ (笑)。練習とか舞台裏でもみんなでふざけ合ったりして、大会の練習はすごくおもしろいんだけど、今朝の練習はあんまり楽しくなくて。なんでだろうって考えたら、理由はわかったんだけど。わかったんだけど、なんて言うか……昔の自分を思い出すというか……うん。今日はすごくすっきりした気分だけどね。でも、よくわからないんです。自分でもわからないの……(涙)
―― 2つ質問があって、1つはアリサへ――だけど、アリサはまだ答えられそうにない? 先にリンカに質問です。SPでトリプルアクセルを取り戻しましたね。今日のジャンプはとてもいい出来でした。
渡辺 そうですね。やっとできたなという思いがあり、1~2週間前に本気でスケートをやめようとして、ただここに来るときに、1回スケートをやめようと思ったから、これ以上失うものは何もないなという思いでこのショートプログラムをやってきて、こっちの現地についてからは自分に打ち勝つことを目標にしっかりショート、フリーともにやっていこうという思いが芽生えて、中庭先生からも「いま渡辺史上いちばん最強だから、最強を証明してきてほしい」と言っていただけて、中庭先生に限らずトレーナーさんやMFで一緒に練習する仲間、ほかのコーチの方々、本当にたくさんの方々に支えられてここに来ることができたので、まずは恩返しの気持ちと自分に打ち勝つことを目標にこのショートをやって、フリーでも自分に打ち勝つことそしてみなさんへの感謝の気持ちを忘れずにしっかりやっていくことが目標だと思いますし、それが今回のアクセルやSPに対する(本番でうまくいかない印象の)払拭という意味でできたんじゃないかなと思います。
―― アリサ、SPを昨年のプログラムに戻し、非常に結びつきを感じているということですが、さらに新しいプログラムを制作することを考えていますか。
リュウ 競技に復帰してから気づいたのは、自分がプログラムを作ることが好きなんだということです。いろんなコンセプトを考えるのも、いろんなドレスを着てみるのも好きだし、いろんな音楽で滑ってみたい。まだやってみたいアイディアがたくさんあります。なので、新しいプログラムはこのあとも作ると思うけれど、それを試合で滑るかショーで滑るかは、どれがいちばんいいと思うかによって決めたいと思います。でも、これからもプログラムを作っていくのは確かです。
―― アンバー、最初に出場したグランプリが中国での大会だったということですが、この大会と観客についてはどんなふうに感じていますか。
グレン たくさんデジャヴを感じました。でも違うマインドセットで試合に臨もうと思っていて、今回は「勝たなきゃ」とは思っていません。ここでは、とにかくベストを尽くして、自分が毎日の練習でやってきたことをすべて出しきって、できるならオリンピックへの出場権を掴みたい、と思いながらやっています。自分がやるべきことをちゃんとやりたいと思います。
◎松生理乃
「いいジャンプをそろえることができたと思うので、達成感もあり、1戦目からちゃんとショートをノーミスできたのはよかった! という気持ちで、いまはいっぱいです。点数を見て、回転不足やレベルの取りこぼしがあったんだろうなと思って、そこはすごく悔しかったです」
◎吉田陽菜
「回転不足や、もっと直せるところはあったと思うんですが、6分間練習があまりうまくいっていなかったので、そこから切り替えることができたと思います。(一緒に戦うトリプルアクセルジャンパーたちは)みんなたくさんの試合で跳んできていると思うんですが、自分もずっと挑戦し続けてきているので、みんなの波に乗れるように、刺激を受けながら極めていきたいです」













