岡山県倉敷市の美しい情景を舞台にした映画「蔵のある街」。倉敷出身の高橋大輔さんが銀幕デビューすることが話題となっています。8月22日の全国公開を前に、7月29日に完成披露舞台挨拶・上映会が都内の映画館「新宿ピカデリー」で開催されました。ダブル主演の山時聡真さん、中島瑠菜さんをはじめ、出演俳優陣6人と平松恵美子監督が登壇して行われた舞台挨拶の模様をレポートします。
また、ワールド・フィギュアスケートwebでは、「蔵のある街」完成披露にあたり、山時さん&中島さん&高橋さんの対談インタビューと撮り下ろし撮影を行いました。全国公開日の8月22日の直前に掲載する予定ですので、どうぞお楽しみに。
高橋大輔「やっぱりちょっと正直、真正面からは見れない」
「蔵のある街」は、倉敷の高校生たちがそれぞれの夢を抱きながら、花火を打ち上げるために奔走する青春物語。高橋大輔は高校生の奮闘を見守る美術館の学芸員、古城緑郎を演じる。先行公開された倉敷では、川舟パレードや舞台挨拶などのイベントが行われ、地元の観客のあたたかい拍手に迎えられたばかり。
高橋大輔、初出演映画「蔵のある街」倉敷で公開記念川舟パレード | WFS-Web
東京での初上映となる7月29日の完成披露舞台挨拶・上映会には、倉敷のイベントにも出席した主人公の高校生・難波蒼役の山時聡真、白神紅子役の中島瑠菜、古城緑郎役の高橋大輔、ジャズ喫茶のマスター中桐仙太役の前野朋哉と平松恵美子監督に加え、紅子の兄きょんくん(白神恭介)役を演じた堀家一希、蒼と紅子の幼馴染・亀山祈一役の櫻井健人が登壇した。
山時は「いいスタートが切れたという実感が湧いていますし、東京の人(どのくらい)いますか?(と客席に挙手を求めて見渡し)どの地域の方にも支えられ、応援されている作品だなと実感が湧きました」と感慨深げ。「倉敷のあの街を全力疾走したり、サックスを大きな音で吹いたり、すごく自由に、気持ちよくお芝居をさせていただいたなと思います。サックスもすごく下手な音でやってましたけど、皆さん許してくださって助かりました」と撮影の様子を紹介。
中島も「高校生の時期に苦しんでいる紅子を演じていて、私自身たまに苦しいなと思うことがあったんですけど、祈一や蒼に助けられて、それがうれしいなと思ったし、人っていいなとすごく思いました」と話した。山時、中島に続いて、堀家、櫻井らが撮影の様子やお互いの印象を語るときも、助け舟を出したり自然とツッコミを入れ合ったりと、現場の雰囲気やチームワークが感じられるトークが進んでいった。
高橋は、映画デビューを拍手で称えられ、しきりに「ありがとうございます」と照れた様子。「最初に平松監督からお話をいただいて、ぼくもお芝居にすごく興味が湧いている時期だったので、そして故郷の倉敷を舞台にするということで、これはもう巡り合わせじゃないかと思い、結構すぐお返事をさせていただいた」と語ると、平松監督が「お返事早かったです。役柄については、そのままの高橋さんでいてください、あまりお芝居することを考えないでくださいとお伝えしました」と応答。高橋は「そう伝えていただいたので、もう台詞を覚えることだけを一生懸命、最初はやりましたけれども。映画として見ているときは、みなさん本当に素敵な俳優さんばかりのなかで、素晴らしい映画だなと思いながら見ていたんですけど、やっぱり自分が出たときはもうこうやって(指の間から薄目で見る動作をして)目を細めながら、やっぱりちょっと正直、真正面からは見れない部分はたくさんあったんですけれども。そういった気持ちもありながらも、どんどんどんどん映画の世界に自分が入り込んでいく気持ちもすごくあったので、最後のほうはうるうるっと来ながら見させていただきました」と、初めての映画出演を振り返った。「スケートの場合はある程度培ってきたものがありますので、ちょっとダメだったな、こうしてみようといった冷静な判断ができるんですけど、映画は初めまして感がすごくて……自分のなかで初めて見る感覚だったので、ちょっとこう、なんとも言えない気持ちですよね」と話すと、隣の前野朋哉が「どっかで分析会みたいなことをします?」と合いの手。「してほしいです、お願いします! ぼくは聞きたいです」と高橋が応えると、監督も「分析会しましょうかね!」と笑わせた。
「一歩踏み出す勇気がないときに、この映画を見て勇気を」
高橋と前野はともに倉敷出身で、期せずして同い年。それだけに息も合っており、掛け合いでも笑いがあふれた。
前野 成人式が一緒だったんです。ぼくはもちろん知っていたので「あの高橋さんだ」と思って見ていましたけど、ぼくのことはもちろん知らなかったですから。それぶりにまさか映画で共演できるとは思っていなかったので、めちゃくちゃうれしかったです。倉敷チボリ公園という、いまはもうないんですけれど、遊園地で成人式をやりました。高橋さん、囲まれてたんですよ。人だかりができていて、なんだあれはと見たら、高橋さんがおられて、「あ、そういうことか、これが人生か」って。(笑)「頑張るぞ、俺は映画を撮るんだ」と思いながら、奮い立たされたというか。(今回共演して)めちゃくちゃ緊張されてましたよね?
高橋 めちゃくちゃ! しましたね、はい。
前野 クランクインのときが一緒で、喫茶店のシーンだったんですが、ぼくもちょっと和ませようと思って、「オリンピックとどっちが緊張しますか?」みたいなこと言ったら、「いや全然こっちです!」って、すごいマジなトーンで。あ、そうなんだと思って。でも、その日丸1日喫茶店のシーンだったんですけど、もうどんどん古城さんになっていった。まあ、成人式のときから思っていたんですけど、やっぱり色気があるなと思いながら、知的で色気があるなと思いながら、ぼくは離れたところから見ておりました。
高橋 (オリンピックより緊張)しましたよ~! 何の経験値もないところにポンと入った感じだったので、マジでどういう作り方でやっていくかもわからない感覚だったので、最初のときはもうキョロキョロキョロキョロキョロキョロずっとしてました。わからないので、とりあえず全力でずっとやろうと決めてやっていました。(同じ出身地で同い年の前野がいて)めちゃくちゃ心強かったですね。共通の知り合いの方がいて、「前野さんめちゃくちゃいい人だから大丈夫だよ」って言ってくださって。
前野 あ、うれしい、うれしいですね。
高橋 あ、じゃあ大丈夫なんだと思って。
前野 現場で怒ったりしないし、「何だ今のは!」とか言ったりしないし。思ってもないし。
監督 初日はね、はたから見ても緊張してるって感じがありましたよね。だって硬いし、動きもぎこちなかったし。足をタンタンタンタンってずっとしているし。(笑)
高橋 いちばん最初に注意されたのが、「トントンしてるよ、足」って。あーっダメなんだと思って。(笑)
前野 映画を見たら、もしかしたらこれが初日だってわかるんじゃないかな。喫茶店のシーンですけどね。でも徐々に和んでいくというか、2人で(高校生の)3人を見ているツーショットがあるんですけど、ね。
監督 2人の和み方がすごくって、遠い目で「高校生っていいな……」と。
高橋 本当にリアルに見ていました。
前野 いいよねって言ってね。(笑)
テンポのいい掛け合いににこにこと参加していた平松監督は、自身の出身地でもある倉敷を舞台にした作品について、「倉敷というと観光地でもあったりするんですけれども、基本的には絵ハガキのようなただ綺麗なだけの絵を撮るんじゃなくて、彼らの素敵なお芝居をしっかり見せるというほうに力を入れて、なおかつ彼らの背後にはこんな街があるんだよということがしっかりわかるような形で作ることを心がけていました」と話した。
最後に、山時が「勇気を与えられるような作品」、中島が「誰かの手助けをしたり、背中を押す一本の映画になったら」、高橋が「ぼく自身も一歩踏み出す勇気がないときに、この映画を見て勇気を感じられると思う」などと映画のヒットを願うなか、前野は、「映画のパンフレットには、今回ぼくらにオファーが来る『前』までが大変だったことがつづられているんです。資金集めや、平松さんを中心に実行委員会の人たちがどうやってこの映画を作ったかという道のりを読んで、映画作りって大変だけど、やっぱり素敵だなと。つながっていって、その末にぼくらもオファーされ、その末に今日があるんだなと改めて感じました。ぜひパンフレットも読んでいただきたいです」と、映画のストーリーさながらに、倉敷の人々が一丸となった映画作りについても紹介していた。
映画「蔵のある街」は8月22日(金)から、新宿ピカデリーほか全国で公開される。